調査中止のお知らせ

こんにちは、大阪大学考古学研究室です。

このたびの八州嶺古墳の調査ですが、昨今の新型コロナウイルス流行をうけ、
感染予防の観点より、本年度は中止せざるをえないという判断となりました。

発掘調査に着手する直前での中止ということとなり、大変残念なことではございますが、
このブログをご覧の皆様には、何卒ご理解をたまわりますよう、お願いいたします。

来年度は、今年度に果たせなかった部分もふくめて調査を実施したいと考えておりますので、
引き続き、皆様のご協力のほどを、何卒よろしくお願い申し上げます。

密林の中で(2020/02/24)

こんばんは。ブログ係のⅠです。

 

数日前から行ってきた測量作業も、いよいよ大詰め。

本日は崖付近や繁みの中など、

今まで判然としなかったエリアの等高線をとりました。

木々の中に分け入る根性を見せるのはK氏(4回)だ

 

数日にわたる団員たちの奮闘もあり、

平板測量は今日でおおむね完了。

調査はなかなかいいペースで進んできています。

 

終了間際にはこんな発見も。

初めて遺物を見つけた下級生

 

円筒埴輪を表採しました。

 

次回からはいよいよ掘削作業に入っていく予定です!

雨が上がって(2020/02/23)

こんにちは。ブログ係のYです。

 

昨日は雨で休みとなったため、二日ぶりの作業です。

本日も引き続き、古墳の地形を確認するための

平板測量を行いました。

スタッフを立てる期待のW氏(3回)

平板測量はただ平板に図をかいていくだけでなく

スタッフと呼ばれる高さを測る棒を持つ人

レベルという器械で高さを読み取る人

平板とスタッフまでの距離を測る人

などの協力が不可欠で

チームワークが問われる作業です。

 

さて、測量が終わると

設定した調査区で

本格的な発掘調査に入ります。

調査区では熱い議論が展開されています

本格的に掘っていくのはこれからですが

調査区の展望について学生たちの間で熱い議論が交わされました。

 

団員のやる気もみなぎってきています。

今後の展開にご期待ください。

発掘前の下準備(2020/02/21)

ブログ係のⅠです。

今日は今年度の調査で発掘する調査区(実際にスコップを入れる場所のこと)

の範囲を設定しました。

ビニールテープで範囲を区画します

 

この設定にもとづいて、これから実際に掘削を始めていきます。

考古学の調査では、むやみやたらと掘っていくのではなく、

事前にしっかりと狙いを定めておくことが大切なのです。

 

また並行して、古墳が築かれた場所の地形を確認するために、

平板測量を行いました。昨年とれていなかった場所の続きをとっていきます。

測量部隊のリーダー格、姉御肌のⅠ氏(4回)

八州嶺古墳はこれまで墳丘の形が明らかではありませんでしたので、

実際に細かい地形を目や足で確認しながら、図をつくっていきます。

チームワークが、試されます。

 

1年ぶりの山登り&調査に対し、団員もしだいにエンジンがかかってきました。

今後も体調に気を付けて頑張っていきたいです!

本格調査開始!(2020/02/20)

こんばんは、ブログ担当のI.Mです。
本日から八州嶺古墳の現地作業が本格的に始まりました。

本日は発掘調査の前段階として、杭の打ち込みや伐採作業などを行いました。

まず測量調査を行う際の基準となる杭を設置しました。

杭を打ち込む大学院生達

地道で大変ですが明日のための大事な作業です。測量の邪魔になる草木も片づけたりして、なかなか体力を使いました…

また初参加の団員に対して説明を行いました。

みなさん熱心にきいています

皆興味深く聞いていたように思います。彼らのこれからの活躍に期待です。

杉井先生と高橋先生

また本日は、熊本大学の杉井先生も見学にお越しになり、調査について色々とアドバイスをいただきました。
調査団への差し入れもいただき、明日の活力になりました。本当にありがとうございました!

明日以降更に調査が進んでいくかと思いますので、ぜひ今後ともブログをチェックしてみてくださいね…!

結団の時(2020/02/17)

こんにちは。ブログ係のⅠです。

まもなく、今年度の八州嶺古墳調査がスタートします。
今日は現地での調査開始に先立って、事前勉強会と結団式が行われました。初めて発掘調査に参加する人も多く、皆集中して発表を聞いていました。

大学院生が調査の流れをレクチャーします

 

今年度の調査の目的は次の通りです。
 
①古墳の墳形・規模を確認すること
八州嶺古墳は、これまでその存在のみが知られており、小円墳の可能性が言われていたものの、その後永らく忘れ去られていました。
しかし、2015年に大阪大学考古学研究室が行った踏査によって、この地点がたしかに古墳であること、更には、近在する万籟山古墳に匹敵する規模の前方後円墳である可能性が高まりました。
そこで、今回の調査では、古墳の前方部と後円部に調査区を設け、墳長を確定させることを目指します。
 
②埴輪から年代を推定する
埴輪は、そのサイズや形から、それが作られた年代を知ることができます。
ですので、今回の調査でも、出土した埴輪を分析すれば、古墳が築造された時期に迫ることができるのです。
 
今後も、こまめにブログを更新していきますので、皆さんご覧いただければ幸いです。

コメントも待ってます!

今年度調査の御礼と御知らせ

先週で万籟山古墳の調査も終了いたしましたが、最後に改めて御礼およびご連絡をさせていただきます。

今年度の発掘調査はこれで終了となります。

現地のご指導いただいた方はじめ調査に携わってくださった全ての皆様に厚く御礼申し上げます。
なお、古墳はアクセス路のない山中に加えて私有地でもあり、立ち入りはできませんので、ご理解のほどよろしくお願い致します。また、調査や遺跡についてのお問い合わせに関しては、大阪大学考古学研究室にお願いいたします。ゴルフ場へのお問い合わせはご遠慮ください。

大阪大学考古学研究室では今回の調査成果を踏まえ、今後も整理作業を続けていく所存でございますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

今年度の調査成果

こんにちわ。ブログ係のNです。
万籟山古墳の2017年度発掘調査もこのまえの金曜日の激戦で
終了。今年度も新たな発見と参加者の成長が認められた調査でした。

発掘調査も一息ついたところで、この場をお借りして発掘調査成果をお知らせしたいと思います。
今回の調査では、現地説明会などで成果を現地でみていただく機会を設けることができませんでした。
楽しみにされていた方には大変申し訳ございませんが、ここでご紹介することで、
すこしでも調査成果を共有できればと思います。
また宝塚市教育委員会とご相談しながら後日、成果報告会などを開催したいと考えています。

成果① 遺存状態の良い埴輪列の検出
墳丘のくびれ部に設定した調査区において、古墳築造時に立て並べられた状態を保った埴輪列を検出しました。
万籟山古墳において埴輪列の存在が確かめられたのは初めてとなります。

円筒埴輪の検出状況

成果② 豊富な埴輪資料の出土 
これまで万籟山古墳では5破片のみしか、資料が公表されていませんでした。
しかし、この発掘調査によって豊富かつ遺存状態の良好な資料を得ることができ、その結果、万籟山古墳の時期的な位置づけや、初期ヤマト政権中枢との技術交流の様相を復元することが可能になりました。
今回、万籟山古墳で出土した埴輪は普通円筒埴輪(ふつうえんとうはにわ)、朝顔形埴輪(あさがおがたはにわ)です。
埴輪の製作時期は、古墳時代前期半ば(4世紀前半)に位置づけることができます。
まだ、全土的に埴輪の樹立が認められないこの時期に、万籟山古墳は中央の埴輪生産技術を取り入れた典型的な埴輪を樹立していたことが判明し、
あらためてヤマト政権と万籟山古墳被葬者との政治的関係が明確となりました。

クビレ部調査区の実測風景

成果③ 墳丘構造の解明に前進
山頂に築造された万籟山古墳は、もとの地形を利用しつつ、やや不整形な前方後円形をしていることも墳丘の発掘調査によって明確となりました。
後円部調査区の中ほどから北側(斜面下方)では、もともと山に存在した岩盤をむき出しにすることで墳丘の一部としているということが判明し、この箇所では岩脈の凹凸をうまく利用することで葺石のかわりとし、墳丘構築の省力化を図っていると考えられます。
また、後円部調査区上方では、墳丘段築成のテラス面から積み上げられた葺石が、きわめて良好に遺存していることが確認できました。
後円部は三段に築成された可能性があります。
くびれ部調査区では、原位置を保つ斜面およびテラス面を検出することができ、前方部は2段築成であった可能性が想定できるようになりました。

後円部調査区

後円部の葺石

以上の発掘調査成果によって、猪名川流域の古墳築造動態についてさらなる詳細情報を得ることができたことは、
万籟山古墳の築造背景を考える上で有力な手がかりとなりました。

山頂に築造された万籟山古墳は、初期ヤマト政権中枢の有力古墳で採用された古墳の特徴(埴輪樹立、葺石、竪穴式石室)を兼ね備えた前期古墳の教科書のような存在です。
このことは長尾山丘陵の地域勢力と初期ヤマト政権との強い政治的連携をさらに裏付けるものです。
このブログを通じて、猪名川を介した南北ルートの地政学的重要性を長尾山丘陵の古墳築造背景として想定できそうだということをお伝えしてきましたが、こうした仮説が今回の調査によってますます確実になってきました。

(N)

埋めて兜の緒を締める(2018/3/23)

こんばんは。ブログ係のIです。
本日行った作業は「埋め戻し」。
一度でも発掘調査に参加した人は、この作業についてこう語るでしょう。
「埋め戻しは発掘調査の中で一番大切で、いちばん過酷だ」と。

遺跡の調査というのは、もちろん掘削を伴います。
それはすなわち、ある意味で遺跡の破壊ともいえるのです。
ですから、調査が終わった後は、トレンチを再び埋めて、
調査前の景観に戻さなくてはなりません。
これは考古学の発掘を行う者にとっての、責任であり、義務なのです。


発掘調査終盤にきて一番の力仕事

しかし、約4週間の調査でたまりにたまった土のうをさばくのは至難の業。
埋め戻しが終わった時には、調査団員のライフはもう尽きかけていました。


意識が朦朧としている二人の団員

しかし、宿舎に戻った我々に考古学の女神はほほえんだのです…


歓喜にわく一同

苦難を乗り越えた後、共に祝杯をあげる。
今、団員の仲はこれ以上ないほど深まっています。

写真撮影(2018/3/20)

こんばんはブログ担当のNです。
本日の万籟山古墳の調査では、発掘調査状況の写真撮影が行われました。

発掘調査での写真撮影前には、まず調査区の掃除が行われます。

くびれ部の写真清掃

ここで撮影された写真は、後に発掘調査報告書に掲載される可能性のある重要なものなので、遺構の状況をしっかりと記録すべく、準備が慎重に行われます。

落ち葉なども入念に拾う

発掘調査での写真へのこだわりは、例えば携帯電話で、気軽に撮る写真とは全く異なるものなのです。

トレンチの外の草木もきれいに刈る
土の乾きを防ぐために散水する

今回の調査では、大学院生による撮影に加えて、
文化財写真を専門に撮影されている寿福滋さんに撮影を依頼しています。

寿福氏による撮影

今日は時に小雨が降るあまりよくない天候でしたが、なんとか、後円部トレンチと前方部トレンチでの写真撮影をほとんど行うことができました。
明日、明後日の調査は卒業式等のためお休みですが、次回以降は残りの写真撮影と埋め戻し作業を行っていこうと思います(N)。