調査も進み、掘削以外の作業も増えてきています。

特に、検出した遺構(発掘調査で出土したもののうち、埴輪などポータブルなものを遺物(いぶつ)、墳丘や葺石などを遺構(いこう)といいます)を図面にしていく作業は、調査の成果をのこすためにもとても重要な作業です。
しかし、考古学における図化作業とは、単なるスケッチではありません。
真上からみた図、真横から見た図など複数の種類の図面を作成して、遺構・遺物の正確なサイズや特徴を記録する必要があるのです。
そのためには、高さや位置の基準となる杭の存在が不可欠です。そして、基準となる杭に標高を落とすことなども、調査における重要なことの一つです。
では実際に、杭の標高を求めるには、どのような作業をしているのでしょうか?
今回は、「レベル移動」と呼ばれる作業のしくみをごくかんたんにご紹介したいと思います!
〈コラム:標高をもとめるしくみ〉
レベル移動とよばれる作業は、例えば標高が判明している杭や基準点をもとに、他の標高が分かっていない杭やポイントの標高を求めるときに行う作業です。
その仕組みは簡単に説明すると以下のようになります。
①すでにわかっている杭(仮に杭Aとしましょう)の標高を確認します。
この場合は杭Aの標高が、T.P.=100.000です。(T.P.については3月5日の記事をご参照ください)
杭Bの標高はわかっていません。
②杭Aと杭Bの間にレベルと呼ばれる器械をたてます。レベルとは、360度どの向きでも、水平に同じ高さをみることができる器械です。
杭Aにスタッフと呼ばれる大きなものさしのような道具を立てて、レベルで数値を読み取ります。
1.500mとよめました!
③杭Aとレベルの高さの差が1.500mということなので、レベルそのものの標高は
100.000m+1.500m=101.500m
となりました。④レベルをそのままの位置にすえたまま、今度は杭Bを向きます。杭Bにも同様にスタッフをたてて数値を読むと、
0.500m
とでました。
⑤杭Bの高さが、「レベルより0.500m低い」ということですので、レベルの標高から0.500mを引いた数字が、杭Bの標高ということになります。
101.500m-0.500m=101.000m
よって、杭Bの標高は101.000mとなります。
これで、杭Aをもとに、杭Bの標高を求めることができました!
実際の現場では、この単純な作業の中でも細かい手順や注意点が多くあります。
発掘調査は、単に掘るだけでなく、こうした作業を組み合わせて進めていくのです。日本では、考古学が文学部にあることが多いのですが、工学部のように測量技術も習得する必要があります。
今回はそうした作業の一端をご紹介しました。(U)