万籟山の一番寒い日(2018/3/9)

こんばんは。ブログ担当のIです。

雨上がりの本日は気温が低く、午後からはみぞれが降りしきるなど、
調査にはいささか厳しい状況ではありましたが、
団員たちは熱いハートをもって、作業に励みました。

しだいに遺構の性格がつかめてきた後円部調査区では、
壁面の清掃や、TS(トータルステーション)という測量機器を用いて
割り付け(考古学の図面は方眼紙を用いて書きます。割り付けとは、機材を使って正確な距離で釘をうち、そこに糸を張ることで、方眼紙のマス目を実際の遺構上におとしていく作業になります)を行うなど、
以後の断面図・平面図作成にむけた下準備をしました。
このような地道な準備が、正確な図面作成につながるのです。


ダイナミックに掘削するときもあれば、繊細な技が求められる時もある

さて、今日のような寒い日、食べたくなるのがインドカレーですよね。
阪大考古学のメンバーはみんな、無類のインドカレー好きです。
そんな思いが通じたのか、宿舎に帰った我々を待っていたのはなんと!


ナマステ(こんにちは)とダニャワール(ありがとう)が口癖
3回生のまとめ役W氏

以心伝心と言わざるを得ない瞬間でした。

ふたたびの雨 (2018/3/8)

こんばんはブログ担当のNです。

本日は雨のため、屋内で出土埴輪の登録作業と、洗浄作業を行いました。
多くの学生が作業に参加し、作業もスムーズに進んでいます。

今年度の調査ではくびれ部トレンチから、多量の埴輪が出土しており、万籟山古墳に樹立されていた埴輪について、より多くの情報がもたらされることが予想されます。

明日以降も今日得た知見を活かして、発掘調査を行なっていこうと思います。(N)

その絆は基底石のごとく(2018/3/7)

こんばんは。ブログ担当のIです。

本日も掘削作業を継続し、遺構を精査しました。

クビレ部調査区では、大量に検出された埴輪片の
写真撮影を行いました。
考古学の調査では、遺構の様子や葺石・遺物の出土状況を
こまめに写真にとる必要があります。
デスクワークだけでなく、発掘の技術や機材の扱いなど、
考古学を学ぶ上では様々なスキルが求められるのです。


画角やピント、シャッタースピードなどを念入りに確認する


影をつくるサポートメンバーも不可欠だ

また、後円部調査区では基底石とみられるサイズの大きな石が姿をあらわそうとしていますが、
慎重に精査しています。

~特集 涙の別れ~
阪大考古学研究室では、ここ数年、発掘調査を春季に行っています。
春は出会いと別れの季節。
4回生は卒業までの残りわずかな時間を調査団員として過ごします。
今日もS氏が最後の現場ということで、宿舎ではささやかなパーティーが
催されました。


U氏(左:D3)とS氏(右)。師弟関係にあった二人は強い絆で結ばれている

積極的に発掘に参加し、研究室旅行では得意の落語で我々を楽しませてくれたS氏。
我々の絆は基底石のように遠い将来にまで残り続けることでしょう。

転落石を取り除く 2018/3/6

こんばんは、ブログ担当のNです。

現場での掘削作業は今日も着々と進んでいます。

本日はこぶし大の石が数多く検出され、本来墳丘に伴っていた石か、それとも墳丘から転落してきたものなのかを慎重に判断しながら調査を進めました。

また、掘削以外にも、今日は図面作成のための杭打ち作業も行われました。

杭の位置情報を得るため、測量も行われています。

発掘調査は大学の実習で学んだ、測量器具の扱いを実践できる貴重な場でもあります。

明日も引き続き、これらの作業を継続していきます。(N)

雨で現場は中止 2018/3/5

こんばんはメディア班のNです。
本日は朝から降雨が続いたため、これまで出土した埴輪の情報登録と洗浄作業を行いました。

発掘調査ではさまざまなものが土の中から出土しますが、それぞれのものがどの場所・層位で出土したかをしっかりと記録することは非常に重要です。
物がまざらないように慎重に作業を行います。

ていねいに情報を記録する

登録作業が終わった遺物は、土がついているため、丁寧にハケで洗浄します。
初めて発掘調査に参加した学生には遺物に触れる良い機会になったのではないでしょうか。

洗浄しながら遺物の観察も行う。

今週の予報では雨の日がまだ何日かあるようですが、天候に負けず明日以降も引き続きていねいな調査を行っていきます。

~コラム~ 円筒埴輪と古墳の築造年代

今回の発掘調査では円筒埴輪が数多く出土していますが、この円筒埴輪はそれが立てられた古墳の築造年代を知る上で、大きな手掛かりとなります。

例えばスマートフォンの形がシリーズごとに大きくなったり、薄くなったりするのと同じように、実は円筒埴輪の形も時期によって変化していくことが今までの研究でわかっています。

円筒埴輪の編年表(廣瀬時習編2009『百舌鳥・古市大古墳群展~巨大古墳の時代~』大阪府立近つ飛鳥博物館 p.72より引用)

以下では埴輪を観察する際の視点についていくつかみていきましょう。

①焼成…埴輪には窯で焼いているものとそうでないものがあります。万籟山古墳の埴輪は観察すると黒斑という、窯で焼いてない埴輪にみられる特徴が現れています。そのため窯では焼かれていないⅠ、Ⅱ、Ⅲ期に見られるような古いタイプの埴輪であるようです。

②はけ…「はけ」とは埴輪の表面にみられるバーコードのような痕跡なのですが、これは円筒埴輪を形づくる工具が使われたときにつく痕跡と考えられています。埴輪についた土を洗っていきながら、こうした痕跡がつけられた方向などを観察します。

③突帯…突帯とは、円筒状の埴輪の周囲に巻きつけられている粘土の紐のようなものです。この突帯の断面がどのような形をしているのかなども、埴輪の時期をみる手がかりになります。

⑤スカシ孔…スカシ孔とは、埴輪の胴体部分にあけられた窓のような部分のことです。埴輪のスカシ孔には四角形(□)や三角形(△)、円形(〇)をはじめとした様々なものがありますが、時期によって流行する形が違ったりするため、出土埴輪の中にどのような形状があるかを観察することも重要です。

もちろん上記以外にも埴輪を見る視点はたくさんあります。

こうした様々な特徴を、発掘調査の途中はもちろん、調査が終わったあとにも継続して分析・検討していくことが、発掘調査の成果をより正確に評価することにつながっていくのです。

引き続き頑張りたいとおもいます!(N)

考古学な土曜日

こんばんは。メディア班のIです。

土曜日も、調査団員は休まず発掘に励みます。
本日も引き続き掘削作業を継続です。
特にくびれ部調査区では3分に1破片ほどのペースで埴輪が検出され、
活気あふれる調査となっています。
埴輪の多くは破片で出土するのですが、
なかにはのこりの良いものもあり、今後の接合・検討作業しだいでは
たくさんの情報を引き出せそうです。

調査は開始から約1週間が経過し、第1クールが終わりました。
幸い天候にも恵まれ、作業していると暑くなってくるほどです。
明日日曜日は調査を休んで、月曜日からの第2クールでは、
掘削の継続、さらには図化作業に入る予定です。

昼休みには、疲れがたまってきた団員を、おいしいイチゴが癒してくれました。


カーリング代表ばりにイチゴを頬張る

続々と出土する埴輪たち

こんばんは。メディア班のⅠです。

今日も掘削の継続です。
本日からは1回生も合流し、調査はますます本格化しています。

ここ数日の作業では、数多くの埴輪片が検出されています。
埴輪というのは古墳に並べられた、土製の焼き物です。
「踊る埴輪」に代表されるような、人型のものをイメージされる方も多いかもしれませんが、万籟山古墳から出土するのは、円筒埴輪と呼ばれる土管状の埴輪です。


埴輪は竹べらで慎重に検出する


万籟山古墳から出土した埴輪(昨年度の調査で検出)

埴輪は、その焼き方・厚さ・ハケメという製作上の痕跡などをみることで、
だいたいどの時期に作られたものなのかを推測することができます。
「年代のものさし」ともいえるでしょう。
したがって、埴輪を観察することは、
それが並べられていた古墳の時期決定にもつながるのです。

埴輪については、いずれまた特集を設ける予定ですので、
ご期待ください。

~コラム 生活当番~
阪大考古学研究室の発掘調査では、「生活当番」という係があります。
生活当番は現場には出ずに宿舎に残り、掃除・洗濯・料理などの
家事をこなします。
その中でもハプニングが起こりやすいのが料理。
過去には様々なシェフたちが独創性あふれる(あるいは想像を絶する)逸品をふるまってきました。
さて、今日のメニューは・・・


仲良しコンビが製作。タレとだしがしみ込んだ力作だ。

心も体も温まるおでんでした。

石の性格をさぐる

こんばんは。ブログ担当のⅠです。

本日も昨日に引き続き、2つの調査区に分かれて掘削作業を行いました。

すると、後円部調査区とくびれ部調査区のどちらにおいても、
表土(現在の地表)の下から、拳よりも少し大きいサイズの石が出てきました。


くびれ部調査区の様子

古墳の発掘では、これが原位置を保った葺石(土砂の流出防止や古墳の荘厳化のために墳丘に葺かれた石)であるのか、
あるいは上にあった石が転落してきたものであるのかを見極めることが大切です。
そのための判断材料の1つとなるのが、基底石の存在です。
基底石とは、葺石の核となる大ぶりの石で、
これは古墳を築造する際にしっかりと据え付けられるので、
転落することもありません。
したがって、基底石が出てくると、その石群は葺石だと解釈できるのです。


宝塚市長尾山古墳で検出された基底石

今後は検出された石の性格をさらに詳しく精査していき、
基底石の存在を確認していくことが作業の第一目標となります。

調査中には、大学院生の先輩が後輩を指導する姿も印象的でした。


淡々と作業をこなす、女子大学院生の鑑H氏(M2)


後輩は先輩の背中を追い、成長していく

掘削作業はすすみます

こんばんは。本日のブログ担当のUです。

今日も、昨日に引き続き、それぞれの調査区を掘り進めていきました。
調査参加5年目以上の大学院生も、今年度から本格的に参加しはじめた下級生も、まさに発掘調査!ともいえる掘削作業には胸躍るものがあります。
しかし、ただやみくもに大スコップを振り回すだけでは調査になりません。
一層一層とミルフィーユのような土をはがしていく掘削作業では、その都度あらたに検出される土層の性格をしっかりと考えながら掘り進めなければならないのです。

当然その過程においては、予想外の遺構や、想定とはことなる質の土が出てくることもあります。
今日の掘削作業においても、少し予想外の成果がありました。


後円部調査区で出はじめた岩盤層

写真は後円部調査区の一部です。
この調査区の浅いところに、地山の岩盤と思われる層が出始めました。昨年度の後円部調査区の写真(詳しくは当ブログの昨年度の記事をご参照ください)と見比べて頂いても、その差がおわかりいただけるかと思います。
墳丘の表面をすべて葺石できれいに飾る、というオーソドックスなつくりかたとは一味違っているかもしれません。
そうした結果の解釈を、作業しながら、あるいはミーティングの場などでしっかりと議論することが、発掘調査において大切な場であるのです。

もちろんそうした作業に集中しながらも、作業に使う道具の手入れ・こまめな整頓なども重要です!


日々使う道具に感謝し、道具についた土をふき取る現場道具の守護神H氏(M1)

調査で判明しつつある様々な情報や、今後の調査のすすめかたを宿舎で熱く議論しつつ、夜は更けていくのでした・・・


白熱する議論。睡眠不足には要注意

本日、掘削をはじめました

こんばんは。ブログ担当のHです。

昨日に続き、本日も春の到来が感じられる良いお天気でした。
発掘調査もはじまったばかりで、調査環境を整えながら、すすめていきます。
本日は現場班、大学班、宿舎班の3つに分かれて活動しました。

①現場班
昨日は調査区を設定しましたので、その調査区内の表土(腐葉土などの表面の土)から掘り下げていきました。
また調査区周辺の除草や掃除もしました。
あたりまえのことですが、調査区のなかだけではなく、
調査区の周辺もきれいにしなければ、よい調査とはいえません。
また除草すると、調査区周辺の詳細な地形が明らかとなってきます。
調査の成果があらわれてきて、写真を撮影する際にも調査区周辺がきれいである必要があります。
まだまだ除草すべきところはありますが、今日、できるかぎりの清掃を行いました。


くびれ部の作業風景

②大学班
大学から現場や宿舎へ、使用する機材を搬出しました。


真剣な面持ちで準備をする、機材を熟知した男たち

発掘調査は、掘削や記録といったイメージが強いのですが、
宿舎整備や現場の資材準備も大切な仕事です。

大学班では機材のチェックも含めて念入りな準備をしました。

釘1本も忘れないチームの主力選手K氏(D1)と今期の注目株T氏(4回)

③宿舎班
宿舎の掃除を行い、大学から運び出された荷物を搬入しました。
宿舎は、これから調査団員が衣食住を共にする大事な場所です。
明日からいよいよ宿泊開始なので、これで受け入れ準備も万全。

本日の掘削作業では、くびれ部を中心に多くの埴輪片が出土しました。
明日は雲行きが少し怪しそうですが、がんばっていきたいと思います。